会社設立時、
必要な11の準備とは?

会社設立時、必要な11の準備とは?

いよいよ、創業準備ですね。

早く、営業活動・販売活動や生産活動に取り組みたいところですが、会社設立時には色々な準備があります。

それらを漏らさずに整えるために「最初に始める11の準備」をご紹介します。

1.社名(商号)を決定する。

◆社名は創業者の夢と情熱を表す

あなたの会社の存在を知ってもらうためには、名前が必要です。社名は、基本的には創業者が自由につけることができます。
親がその思いを託して子どもに名前を付けるように、あなたの夢や情熱を表す社名を付けましょう!

◆覚えてもらい易い社名を付ける

社名は、あなたはもちろん、会社に関わりを持つ人たちも長く付き合っていくこととなります。
難しい漢字を使ったり、当て字をどう読むかわからない社名では、経営にも支障を来たす可能性があります。

聞き取り易いこと。分かり易いこと。覚えてもらい易いこと。こうした条件を備えた社名は、事業を続ける上で大きなプラスになります。商品名やブランド名、事業内容をそのまま社名にするケースもあります。

これまで「類似商号」の会社は、同一の市町村内に登録することができませんでしたが、類似商号制度の廃止によって、本店の住所が違えば、同一商号・同一業種であっても登記が可能になりました。(※ただし、不正競争目的で類似商号を使用することは禁止されています)

2.事業目的を明確にする。

◆何をする会社なのかを明確にする

事業目的は、どんな事業をするために会社を設立するかを示します。
会社の定款に掲載しなければならない絶対的記載事項の一つで、定款に記載していない事業をすることは認められません。

◆将来やる予定のある事業も全部書く

定款には事業目的をいくつ書いてもかまいません。そのうちにやりたいなと思っていることも予め盛り込んでおくと、後で定款を書き直す必要がなくなります。

◆あまり多いと信用を失うことも・・・

だからといって、なんでもかんでも定款に入れてしまうと何をする会社なのかわからなくなります。そんな会社にお金を融資していいのか?銀行も不安になるでしょう。
とりあえずは、多くても事業目的の数は10種類以内にしておくのがよいでしょう。

なお、最後に「前各号に附帯する一切の業務」の一文を入れておくと、事業目的を拡大解釈できるので、派生事業を始めるときに定款を書き直す必要がなくなります。

3.代表取締役と役員を選任する。

◆代表取締役社長は会社の「顔」

代表取締役は、その名の通り会社を代表する立場にあります。創業したばかりの会社は、取締役が社長一人しかいないこともよくあります。この場合、当然社長が代表取締役となります。

◆会社の契約をする決定権を持っている

代表取締役は最終的な決定権を持っていて、自分の意思で契約をすることが可能です。代表取締役のほかに取締役がいる会社は、一緒になって経営に関する決定事項を相談するのが一般的ですが、取締役の意思で契約をすることはできません。

ほかに取締役がいない小さい会社では、代表取締役が会社の意思決定を気兼ねなくすることができます。

◆会社の借金の連帯保証人になる

中小企業の場合、銀行などの金融機関と交渉をするのは代表取締役です。
もちろん融資に関する決定権も代表取締役が持っています。

しかし、ほとんどの場合で、代表取締役が会社の借金の連帯保証人となることを求められます。会社が融資を受けるとなれば、
私財を投げうつ覚悟が必要になるのです。

◆代表取締役以外の役員は置かなくてもいい

会社の役員とは、代表取締役・取締役・監査役・会計参与です。

代表取締役…会社を経営し、外部に対しては代表となる者。いわゆる社長のこと。

取締役…会社の経営に関わり、担当する業務を行う。

監査役…会社の会計(お金の動き)をチェックする。

会計参与…取締役などと共同して会計書類を作成する。税理士や公認会計士が就任する。

取締役会非設置の場合は、代表取締役以外の取締役や監査役、会計参与は設置しなくても構いません。

4.役員報酬を決定する。

◆報酬は社長や役員の給料

役員報酬は会社から社長や役員に支払われる給料です。
その額をいくらにするかは、株主総会で決定します。
役員報酬は会社の利益の中から支払うので、多くするほど会社の利益は減ります。
役員報酬を増やしたり減らしたりすることで、会社の利益の額を調整することが可能です。

◆役員報酬を増やすと会社の利益は減る

社長の手取りを多くするか、会社に利益を残して資産を充実させるかは社長の判断次第ですが、創業時はまだ利益がいくらになるか分かりません。
「サラリーマン時代の年収は確保したい」という人もいるでしょうし、「最初は自分の収入は最低限生活できる程度でもいい」という考え方もあります。

ただし、利益が少ない会社には銀行が融資をしてくれないので、ある程度の利益を残すことは必要です。
なお、役員報酬額は、1年間の事業年度を通して一定額でなければなりません。

◆役員報酬で節税することも可能

税金の面から見ると、会社の利益には法人税等が、役員報酬に対しては所得税と住民税がかかります。
両方の税金の合計が最も少なるなる役員報酬の額を設定できると、節税という観点では有利です。

配偶者を役員にすると、さらに所得税と住民税が節税できるのが一般的です。
複数の役員がいるときは、報酬の配分をどうするかも考える必要があります。
節税だけを前提にして役員報酬を決める必要はありませんが、税金がいくらになるかについても配慮するようにします。

5.資本金を用意する。

◆資本金は会社設立時に用意した資金

会社を設立するには資金が必要になります。
そのために社長が用意した自己資金や、人から出資してもらったお金が資本金になります。
借金など後で返す義務があるお金は、法律上は資本金に含まれません。

◆会社の運営に使うことができる

社長やほかの人が出資したお金は、いったん発起人の個人名義の銀行口座に入金して集めます。
その通帳のコピーが会社を登記する時に必要だからです。
登記が済めば、そのお金は資本金として会社の運営のために使うことができます。

6.取引銀行を決定する。

◆銀行口座の開設には時間がかかる

取引銀行をどこにするかも、会社を設立する前から決めておきます。そして、会社を設立したら、なるべく早く金融機関に行って会社名義の口座を開きます。
銀行の審査が最近は厳しくなっていて、設立日から1か月近くかかってしまうことも少なくないからです。

◆目的によって取引銀行を使い分ける

金融機関の口座は、主に次のような目的で利用します。

・売り上げなどを入金する
・商品や材料を購入するための運転資金をプールする
・納税用の資金をとっておく
・従業員の給与振り込み
・融資のやり取りを行う

すべての口座を一つの金融機関に置く必要はありません。会社の会計が筒抜けになるのを防ぐためにも、目的に応じて複数の金融機関を使い分けるとよいでしょう。

◆「近くにある金融機関」が便利

銀行と一口に言っても、いろいろ種類があります。主なものは次の通りです。

小さな会社は、こちらの事情に合わせて小まめに動いてくれる身近な金融機関と付き合うのがよいでしょう。
売上や利益が大きくなると、規模の大きい銀行と取引するメリットが出てきます。都市銀行と取引があるだけでも、取引先からの信用が違ってくるからです。

7.本店所在地を決定する。

◆登記上は事務所の所在地でなくても構わない

よく「本社所在地」と言いますが、定款や登記簿に書く会社の住所は、「本店所在地」です。

本店所在地の住所は、事務所があるところとは限りません。店舗や代表者の自宅など、何処を本店所在地にしても構いません。

本店の住所がある税務署に法人税などの税金を納めます。

◆定款には本店所在地は細かく記載しない方が良い

本店所在地の書き方には、次の2通りがあります。

1.具体的な番地までは記載しない。
 例)「当会社は、本店を埼玉県さいたま市大宮区に置く」

2.具体的な番地も記載する。
 例)「当会社は、本店を埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-7-5に置く」

もし、定款に具体的な番地を記載した場合は、同じ区内で事務所を引っ越した時も定款を書き直さなければなりません。
少々、手狭になって隣のビルに引っ越したという時も定款変更が必要になるので、面倒です。

前者のようにしておけば、同じさいたま市の中で本店が移るのなら書き直さなくても済みます。

8.株式会社と株主を押さえる。

◆日本の会社の9割以上が株式会社

会社には、株式会社・合名会社・合資会社・合同会社があります。
このうち、株式会社は対外的な信用が得やすく、もしも、倒産しても出資した人が負債を返す必要がありません。

このため、出資者を集め易く、日本の会社の9割以上は株式会社が占めています。

◆株主は会社に出資した人のこと

株式会社では、出資者に株を買ってもらって資本金を用意します。ですから、株主は出資者であり、お金を出して会社を買った所有者でもあります。

通常は、まず、代表取締役社長となる本人が発起人となり、自ら出資して株主となります。他にも発起人がいれば、その全員が株主となります。

さらに、発起人以外にも出資を募って株主になってもらう場合もあります。

◆株式は必ず、67%以上保有しよう

小さい会社では、代表取締役社長が一人で100%の株式を持つのが基本です。
他に発起人がいても、代表取締役が最も多額の出資をした大株主であれば、他の株主が経営に口をはさんで来る心配はまずありません。

社長の出資比率がそれほど多くない場合は、最低でも株式の半分以上を社長本人が持つようにしましょう。
そうしないと会社を乗っ取られてしまう危険性が出てきます。
経営権を握るには、株式保有率が50%ちょうどでは不十分で、67%以上保有する必要があります。

9.事業年度を設定する。

◆通常は決算月までの1年間が事業年度となる

株式会社は基本的に1年ごとに決算をします。決算月が3月であれば、4月から翌年3月までの1年間が事業年度になります。
1月に設立して決算月が6月の会社の場合、1期目の事業年度は6か月間で2期目から1年間となります。

◆事業年度の始めの方に忙しい時期を持ってくると良い

事業年度は、何月から初めても構いません。売上が一番多くなる月を事業年度の始めに持っていくというやり方もあります。
期末に売上が多い月が来ると、忙しい時期に決算業務が重なってしまうからです。

また、期首から3か月以内は、経費のうち多くを占める役員報酬の額を変更することが認められます。
これを利用すると経費の調整がやり易くなります。そのためにも、早めに売上の多い月が来た方が良いのです。

言い換えれば、事業年度は、会社の都合に合わせて決められるということです。

10.会社の印鑑を用意する。

◆会社の印鑑は4種類用意する

1.代表者印
個人の実印に当たるもので、法務局に印鑑登録します。3cm四方の正方形に収まる大きさで直径1.1cm以上と決まっています。よく使われるのは直径1.8cm程度の丸印です。会社の実印として、契約等に使います。

2.銀行印
銀行で法人の口座を開設したり、手形や小切手を使う時に使う印鑑です。

3.社印
四角い印鑑にすることが多く、「角印」とよく呼ばれます。見積書や請求書、領収書などに使います。

4.ゴム印
書類の署名欄に、社名・住所・代表者名などをいちいち手書きしなくても好いように作る印鑑です。

◆安物で済ませず、印章店で作ってもらう

会社の印鑑は、個人と同じ感覚で三文判やスタンプ式のような安物を使わないようにします。

特に代表者印は、印鑑証明書を発行するために印鑑登録をしなければなりません。

印鑑証明書は、さまざまな申請をする際に必要になります。
もしも、代表者印の捺印面の一部が欠けたりすると、その印鑑はもう使えなくなり、新たなものを用意して印鑑登録をし直さなければなりません。

印章店に頼んでもそれほど高いものではないので、上記の4種類の印鑑をセットで作ると良いでしょう。

11.定款を作成する。

◆定款は会社のルール。必ず、作らなければならない

会社のあり方についても基本的なルールを記したものが定款です。定款を作成することは法律で義務付けれらていて、会社の本店所在地を管轄している公証人役場で認証を受けます。

定款の内容は、次のように絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項の3種類の事項に分けられます。

1.絶対的記載事項 ➡︎記載しないと定款として認証されません。

「会社の目的」「商号」「本店所在地」「設立に際して出資される財産の価額またはその最低額(資本金)」「発起人の氏名または名称および住所」「発行可能株式総数」

2.相対的記載事項 ➡︎定款に記載することで法的効力が生じます。

「現物出資」「財産引受」「設立費用」「設立時の取締役や監査役の氏名」「取締役会や会計参与・監査役などを置く旨」「役員の任期の伸長」「役員の責任の減免に関する定め」「株主総会の招集機関の短縮」「公告方法」「株式の譲渡制限」「株券発行」など。

3.任意的記載事項 ➡︎法律上は記載しても、しなくても構いませんが、記載することで「会社の法律」となります。

「定時株主総会の召集時期」「取締役・監査役の数」「株主総会の議長」「事業年度に関する規定」などお公序良俗、会社の本質に反しない限り、どんな事項でも定めることができます。