歯科医院M&Aの最前線!

2025年 9月 13日

■ M&Aの対象医院が拡大

企業の合併・買収を指すM&Aが、歯科医院にも広がりつつあります。コロナ禍前までは、歯科でM&Aというと、年間の医業収入が何億円もあるような大型医院か、分院展開する医療法人という限られた世界の話でした。近年、それが「普通の歯科医院」にも広がってきているとされています。

確かに、ユニット3台、常勤歯科医師1名といった規模の歯科医院にも、M&A仲介業者から「売りませんか」というDMが届くようになっています。そのため、引退を考えている院長が「オレの所も買ってもらえるのか?」と期待することがありますが、実際には、特定の地域にある歯科医院に無差別に送られているだけで、M&Aの対象になっているとは限りません。とはいえ、裾野が急速に広がっているのは事実のようです。仲介業者にとって、M&Aは売買価格の何パーセントという形で双方、もしくは片方から手数料を得る仕組みですから、小規模な歯科医院が対象にならなかったのは当然です。近年、「え、こんな小さな医院も?」というところも売買されるようになっているのは、以下のケースが多いようです。

①特定のエリアでの分院が欲しい(コンサルタント会社など)
②歯科訪問診療の拠点が欲しい(医科系医療法人、社会福祉法人など)

この場合、買い手側のニーズに合致した地域、診療内容であれば、医業収入に関わらず大きなお金が動くためです。

■ M&Aで、大規模化が加速

医療は「地域密着型産業」の典型と考えられてきたため、全国的なチェーン展開に適さない業種と見られてきました。特に、小規模クリニックが大半の歯科は、M&Aによって規模拡大するメリットが大きくないと考えられてきたのは事実です。

しかし、薬局は大手チェーンによる業界再編がほぼ完了した結果、調剤薬局の収益構造が改善した実績があります。歯科についても、アメリカでは「経営サポート企業」(Dental Service Organization: DSO)が歯科医院を全国的に買収して巨大チェーンが生まれています。こうした動きは、経営の集約化によって効率性を高める効果が期待された結果と見なすことができます。

アメリカで、DSOによる医院経営が注目され始めたのは10年ほど前。当時、シカゴで開催されたデンタルショーの関連セミナーで、DSOの営業担当者が「経営管理だけではお金を生まない。効率化で収益業務に集中を!」とアピールしているのを聞きました。事実、日本でも大規模法人がM&Aでファンドに売却され、経営のてこ入れがなされた結果、数倍も売り上げを伸ばした例もあります。

こうしたM&Aの中には、ファンドなどから経営のプロを招き入れる手段として行われることもあります。今後、M&Aにより、大規模法人がさらに大型化していく流れが加速していくと見られます。

■ 「無歯科医地区」対策はどうする?

一方、高齢の歯科医師が一人で診療、経営する小規模医院の休廃業・解散が増加傾向で、社会的にはこちらの方が大問題でしょう。帝国データバンクによれば、2024年1~10月までの歯科医院の休廃業・解散のうち、院長の半数以上が70歳以上でした。歯科医師の高齢化と地域偏在、求人難の深刻化が、近隣数キロにわたって歯科医院の存在しない「無歯科医地区」の増加につながっています。

それらの地域では、バスなどの公共交通機関も廃止されてしまっているケースが多く、訪問診療の対象にならない患者さんは歯科受診の機会が奪われている状況です。地域によっては、一人で複数の歯科医院の開設管理者を兼ねられる制度を採用しているところもありますが、実際には歯科医師の過重労働と不採算経営の原因になっています。

一部、昭和時代には行われたことのある巡回診療を復活させたり、訪問診療の距離制限を緩和したりするアイデアが提唱されているものの、いずれも担い手となる歯科医院の経営を上向かせる決定打に欠けています。

そこで、医科系や福祉系の法人の一部で話題に上がるのが、「中山間地域の医院を買収。複数の拠点でネットワーク化して経営コストを下げ、診療日を絞って人員配置を効率化させる」というアイデアです。現行制度を変える必要はなく、現状の施設を生かすため実現性は高そうですが、それでも求人難が課題として残ります。社会課題への対応は、中央省庁が考えるよりも現場でのグレーなアイデアを追認する方が現実的とされます。各地方にどんな実践例があるか、注視したいと思います。

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