開業時、融資が止まる瞬間とその理由

2025年 10月 30日

■ 趣味への出資で「不良債務者」!?

 歯科医院の開業資金が土壇場で調達できない。その原因が「趣味でのローン利用」や「クレジットカードの枚数」だとしたら、驚く歯科医師も多いのではないでしょうか。
 近年、歯科医院の新規開業、改装のコストが急速に増大しています。数年前までは6,000万~7,000万円ほどでできていた新規開業。これが人件費増大などの構造的な理由で、現在、地方でも1億円超えが当たり前となっています。開業コストの増加傾向は、今後も続くと見られています。
その分、多額の借入を必要とするのですが、思いがけない理由によって資金調達が困難になるケースがあります。代表的なのは、「勤務医時代、節税目的の投資のためタワーマンションをローンで購入」というものです。自宅の購入にローンを活用したのであれば、それほど問題になりませんが、投資目的の場合、「巨額の借入がある債務者」という扱いになるため、融資の条件が厳しくなってしまうのです。重要なのは、事業融資を受ける前の勤務医時代に、不要な借金をしないこと。
 ある大手地銀でクリニック向けの事業融資部門を担当していた金融マンは、「勤務医時代、高級外車の購入など趣味のために借入するのはNG」だと強調します。勤務医としてキャリアを積む中で「収入が多くなったのだから、少しの贅沢は許されるはず。うまくすれば節税にもなる!」などと考えがちですが、そこで安易にローンを使うと、開業時の資金調達で思わぬ落とし穴に嵌まることになります。

■ カードをいくつも持っているだけで・・・

 他には、多数のクレジットカードの保有もマイナスになります。「営業マンにお願いされて、付き合いでたくさん契約しただけ、実際にお金を借りたりしていない」というケースでも、「いつでも、カードローンの債務者になりうる」と解釈されて、融資条件が厳しくなることがあるそうです。そのため、手持ちのクレジットカードを必要最小限に絞り込んでおくことも必要です。
 ちょっと見ただけでは「借金」だと思われないものとしては、携帯電話料金があります。日本では、携帯電話料金に電話機本体の料金を上乗せして分割払いで購入することができます。これらは、機器のレンタルではなく分割購入ですから、本体料金をいったん借入していることと同じ意味です。
そのため、万一、携帯電話料金の支払いを忘れてしまった、という場合、少額とはいえ借入返済を焦げ付かせた実績になってしまいます。そうなると、本人の知らないところで「不良債務者」に分類され、開業資金を調達したいと思っても「あの先生は、小口の未払い債務がある」と、厳しい評価を受ける可能性があるのです。「私には借金がない」と思っている歯科医師でも、詳しく見ていくと、思わぬところで債務を負っていることがありますから、ご注意を!

■ 開業計画が途中でストップ!

 先の金融マンによると、「医師、歯科医師の免許だけで、無担保で数千万円の融資が可能なのはなぜか、考えてほしい」とのこと。1億円超えの開業計画なのに、自己資金をほとんど用意していないケースも少なくないというのは驚きです。そうした歯科医師と話していて、「真剣に開業を検討しているのか!?」と疑問を抱く金融マンも多いのだとか。自己資金を準備せずに多額の借入をすると、返済の条件も厳しくなり、開業後の資金繰りに苦労することになります。
融資の際、家系図のような表に記入してもらう金融機関があります。これは、「万一の際、親族になんとかしてもらう」という事態が想定されているということです。医師、歯科医師は富裕層家庭の出身者が多いため、こうした措置が取られるという面もありますが、歯科医師免許だけで無担保で多額の融資をするには、金融機関も相応の覚悟で臨んでいる証とも言えます。
 十分な自己資金を準備していないばかりか、不用意に借入して残債を作っていたり、少額でも返済が滞っていたりすれば、当然、融資の条件が厳しくなります。そして、「開業地を選定。施工会社にも契約した」というような段階で、肝心の融資が実行されない、という不測の事態もありえます。
近年、大規模法人で長く勤務する歯科医師が増えて、開業志向が減退しているとされます。それだけに、金融機関は開業案件への融資に積極的になる反面、厳しい条件を突きつけられることもある、ということです。

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