家族信託×遺言書が最強の相続対策!

 

資産凍結を防ぎ、”争族”を回避するための鉄則

「家族信託契約を結んだから、もう遺言書はいらない!」
そう考えて安心していませんか?

家族信託は、認知症による資産凍結を防ぐ切り札として非常に強力ですが、実は「万能」ではありません。

相続の現場を知る専門家の多くが、
「家族信託と遺言書のセット運用」
を強く推奨するのには、明確な理由があります。

本コラムでは、なぜ併用が必要なのか、そしてどんなに完璧な契約でも無視できない
「遺留分(いりゅうぶん)」の落とし穴について、制度の仕組みから徹底解説します。

 

1. なぜ「併用」が必須なのか? 〜信託契約の「死角」を埋める〜

家族信託契約において、承継先(誰に渡すか)を
決められるのは、あくまで
「信託財産の対象にした財産」だけです。

しかし現実には、個人の全財産を信託することは
稀であり、以下のような財産は手元に残ることが一般的です。

  • 信託契約後に増えた個人の預貯金
    (年金受取口座など)
  • 信託に適さない農地
  • 愛車や家財道具、趣味のコレクション

 

遺言書がないと「遺産分割協議」へ逆戻り

もし遺言書を作成していない場合、これらの
「信託しなかった財産」
については、通常の民法上の相続ルールが適用されます。

つまり、残された家族(相続人)全員で
「遺産分割協議」を行い、
「誰が何をもらうか」を話し合い、
全員の実印と印鑑証明書を揃えなければなりません。

家族信託を利用する動機の一つに
「将来の揉め事を減らしたい」という思いがあるはずですが、
信託外の財産について協議が必要になれば、そこが争いの火種になるリスクがあります。

また、協議を行うためには、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を集め、相続人を確定させるという煩雑な作業も発生します。

 

遺言書があれば「手続き」が劇的に楽になる

一方、家族信託とあわせて
「信託財産以外の全財産は長男に相続させる」
といった遺言書を作成しておけば、原則として
遺産分割協議を経ることなく、スムーズに名義変更手続きを進めることができます。

さらに、信託契約書はあくまで契約ですが、遺言書には「付言事項」として、家族への感謝や
「なぜこのような分け方にしたのか」というメッセージを残すことが可能です。

これが遺族の心情的な納得感を高め、無用な争いを防ぐ効果も期待できます。

 

2.「全部あげる」は危険? 無視できない『遺留分』の壁

家族信託や遺言書を使えば、
「長男に全財産を譲る」と指定すること自体は可能です。

しかし、ここで立ちはだかるのが
「遺留分(いりゅうぶん)」という法律の壁です。

これを考慮せずに設計すると、死後に
「こんなはずじゃなかった…」という事態に陥りかねません。

 

そもそも「遺留分」とは?

遺留分とは、配偶者や子供など、一定の相続人に
法律上保障されている
「最低限の遺産取り分」のことです。

たとえ信託契約や遺言で「長男にすべて」となっていても、他の兄弟(次男など)は
「自分にも最低限の権利がある」と主張することができます。

 

2019年の法改正で「金銭解決」が原則に

かつては遺留分として
「不動産の一部(共有持分)」を渡すこともありましたが、法改正により、現在は原則として
「金銭(現金)」で支払わなければならないというルールになりました(遺留分侵害額請求)。

ここに最大の落とし穴があります。

例えば、主な財産である「実家の不動産」を、
家族信託で長男に継がせたとします。

次男から遺留分を請求された場合、長男は
自分のポケットマネーから数百万円、数千万円単位の現金を支払わなければなりません

もし手元に現金がなければ、せっかく守ろうとした実家(信託財産)を売却して現金を作るしかなくなり、本末転倒な結果を招く恐れがあります。

 

3. 失敗しないための「設計」と「期限管理」

円満な資産承継を実現するためには、
以下のポイントを押さえた設計が必要です。

 

役割分担を明確にする

「不動産」などの管理が必要な資産は、
家族信託で認知症対策と承継を行い、「現預金」などの流動資産は
遺言書で遺留分対策として他の兄弟に渡すなど、トータルでのバランス調整を行います。

 

期限を意識する

遺留分侵害額請求ができる期間は、
「相続開始と遺留分の侵害を知ってから1年以内(または相続開始から10年以内)」
と決まっています。

また、相続税の申告期限は「10ヶ月以内」です。

家族信託をしていても税金の計算方法は
通常の財産と同じため、納税資金の確保もセットで考える必要があります。

 

まとめ

家族信託は「認知症対策」と「資産承継」において非常に強力なツールですが、
それだけで完結する魔法の杖ではありません。

「遺言書」で信託外の財産をカバーし、「遺留分」を計算に入れて争いの種を摘む

この二重・三重の対策(トータルコーディネート)こそが、あなたの想いを確実に次世代へつなぐ
唯一の方法と言えるでしょう。