遺言書で「一人に全て」を託すための秘訣!トラブル回避と実現のポイント

 

遺言書を作成する際、「疎遠な兄弟姉妹ではなく、妻一人に相続させたい」「老後の世話をしてくれた孫だけに財産を残したい」など、誰か一人だけに遺産を相続させたいと考える方もいるでしょう。

結論として、自分の財産を一人に相続させる内容の遺言書を作成することは可能です。

遺言書では、被相続人は自身の財産処分について自由に意思表示ができます。

ただし、日本の遺産相続制度には、相続人の利益を守るためのさまざまなルールが定められており、一人に相続させる遺言書を作成すると、深刻な相続トラブルが生じる可能性があります。

遺言者の意思を実現し、死後のトラブルを防ぐためには、利害関係人の立場や関係性を踏まえた事前の対策と慎重な準備が必要です。

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一人相続で想定される2つのトラブル

遺産を一人に相続させる内容の遺言書が原因で生じる代表的なトラブルには、以下の2つが挙げられます。

1. 遺言の無効主張

遺言書の内容に納得できない他の法定相続人が、自らの経済的利益を確保するために「そもそも遺言書が無効だった」と主張する可能性があります。

これにより遺産分割協議が難航し、遺言無効確認訴訟にまで発展し、親族間の争いが泥沼化するリスクがあります。

2. 遺留分侵害額請求

兄弟姉妹以外の法定相続人には、遺留分(最低限保障された相続割合)が認められています。

複数の法定相続人がいる状況で一人だけに相続させる遺言書を作成すると、
他の相続人が遺留分を確保するために遺留分侵害額請求権を行使する可能性が高いです。

遺言を実現するための生前対策

遺産を一人だけに相続させる遺言を実現し、トラブルを回避するためには、遺言者が生前に対策を講じることが重要です。

理由の丁寧な説明

他の相続人の不満感を払拭するため、なぜ一人に相続させるのか、その理由を相続人全員に丁寧に説明しておきましょう。

遺言書内に感謝の気持ちや遺産配分の理由などを記載する付言事項〈ふげんじこう〉も有効な手段です(ただし付言事項に法的効力はありません)。

遺留分の放棄

相続発生前(遺言者が亡くなる前)であれば、家庭裁判所の許可を得ることで、事前に遺留分を放棄してもらうという選択肢があります。

相続人廃除の検討

「どうしても相続させたくない相続人がいる」場合は、虐待や重大な侮辱、著しい非行があったことを要件として、
遺留分を有する推定相続人から相続権を剥奪する相続人廃除制度の利用を検討します。

相続税対策

相続人が経済的な負担で苦労しないよう、不動産や株式などの現金以外の遺産を現金化し、
相続税の支払いに備えるといった対策を同時に行うべきです。

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失敗しないための遺言書作成のポイント

遺言書作成において失敗しないためのポイントを5つ解説します。

1.自分の全財産を正しく調査する

遺言書作成のスタートとして、被相続人に属していた全ての財産(借金などのマイナスの財産も含む)を漏れなく把握するための調査が推奨されます。

財産目録を正確に作製し、「一人に相続させる」ことで相続人の誰かが苦労することのないように判断しましょう。

2.有効な形式・内容の遺言書を作成する

遺言書の形式や内容が民法に違反すると、遺言の無効を主張されかねません。

自筆証書遺言を作成する際は、全文自筆、作成日の自筆、氏名の自筆、押印などのルール(財産目録は例外あり)に厳しく注意する必要があります。

3.公正証書遺言の活用

形式面での不備や無効主張のリスクを大幅に減らすためには、公正役場で厳格な手続きを経て作成される、公正証書遺言を検討することが推奨されます。

4.遺言能力の証明

遺言書作成時に遺言能力(内容を理解し結果を認識する能力)がなかったと判断されると、遺言書は無効と扱われます。特に一人相続の遺言書は無効確認訴訟を提起される可能性があるため、作成日と近接したタイミングで認知能力に問題がないことを示す客観的証拠(医療機関での検査結果など)を用意するなど、リスクヘッジが大切です。

5.専門家への相談・依頼

遺言書をめぐるトラブル回避と確実な実現のためには、遺言書作成サポートが得意な弁護士に相談・依頼することをおすすめします。弁護士は、相続財産調査、形式・内容の不備防止、遺留分の放棄の同意取り付け、遺言執行者としての業務など、多方面でサポートを提供してくれます。

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